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私の韓国での生活も、帰国予定の平成１５年５月末となると３年８ヶ月になります。これに40歳代の時の通算５年に及ぶタイの生活を加えると，海外生活はほぼ９年になります。
ある著名な方が新聞のコラムに次のような言葉を載せていました。
『７ヶ月生活すると，其の国の７割が解かる。しかし、其の滞在が３年に及んでも７割しか解からない』
私がタイや韓国のことを７割理解しているかどうかは解かりませんが、日本を見る目が少し変わったような気がします。その中から幾つかの話題を取り挙げてみたいと思います。
＊ 新正月を祝うのは日本人だけ？
欧米のことはよく知りませんが、ＴＶで見る限りどうも新年そのものを祝う習慣はないのではないでしょうか？ 新年に移る瞬間のみを祝うような気がします。カウントダウンに始まり、其の瞬間後の紙ふぶきや港に泊まる汽船の一斉の汽笛、軍隊によって行われる空砲も全て其の一瞬のみのようです。
一方、私の知るアジア地域では、祝う正月が新正月ではなく、タイでは４月中旬のタイ正月、中国･台湾及び東南アジアの中国系社会と韓国では，旧暦の正月を祝います。本家本元のイスラム社会は知りませんが、私がタイで最後に赴任したタイ最南端、マレーシアとの国境に面した地は住民の８割がイスラムで、ここでは更にイスラム暦の正月も祝っていました。
確か、日本も明治６年までは旧暦を採用し、その後も私が子供の頃まで田舎では旧正月の方が盛んだったように思います。でも、今の日本では、旧正月はほとんど消滅したようですね。太陰暦の暦だけは、今、静かなブームを呼んでいるようですが
我々の日常生活の中で、月の影響を受けているのは、決して海の干満だけではないはずです。永年使ってきた太陰暦に意味のなかろうはずがありません。今や太陽暦はグローバルスタンダードそのもの。今更、太陰暦に戻せとは言わないまでも、太陰暦との併用を考えてみてもいいのではないでしょうか。
＊ 内地米（ジャポニカ種）は，家畜も食わない
数年前、日本は冷夏に見舞われ、お米が不作だった記憶は鮮明に残っていると思います。あの時，緊急措置として、タイ等から大量のお米が輸入されました。しかし、タイ米の評判は悪く『こんなお米（インデイカ種）は家畜も食べない』と言われたものです。
私は昭和18年生まれですから、子供時代は碌なお米を食べていないことになります。芋の弦や麦の入り交ざったご飯の他、外米、黄変米の記憶もあります。
当時の外米とは、今思えばこのタイ米だったのですね。内地米に比べ細長く、やけにパサパサしたご飯だったことを覚えています。
〝鳥の刷り込み現象〟と言うものがありますが、これはある種の鳥が、生まれて最初に見た〝動くもの〟を自分の親と思い込む現象のことですが、これは何も鳥に限ったことではなく人間にも当てはまるのではないでしょうか。〝お袋の味〟なんて正にその種の一つだと思います。私の場合、この幼い頃の貧しい食糧事情の経験が、将来どれほど私の海外生活に役立ったか、当時は思いも寄りませんでした。
数十年後、タイに赴任しタイ米と再会しましたが、私にとっては懐かしいものではあっても決して嫌悪する対象ではありませんでした。
建設業は比較的全国から満遍なく職員を採用しておりますので、結構、地方の田舎の出身者がいます。彼等の内、私と同年齢でも幼い頃はずっと豊かな食生活を送ってきたはずです。だからこのタイ米は苦手なようです。私はそうした同僚によく『俺はシテイー・ボーイだからタイ米は平気だが、お前等カントウリー・ボーイは大変だな』と言ったものです。正直、今もそう思っています。
しかし、仕事や観光で日本に行ったことのあるタイ人が言いました。『あんな べちゃべちゃした日本のご飯は，タイでは家畜も食わん』と。あれ？どこかで聞いたことのある言葉だな。
＊ 日本人はウンコの臭い？
昔、一度我家にフランス人を泊めたことがあります。彼が帰った後、彼の寝た部屋に入った途端、〝う～っ〟と息が詰まってしまいました。彼の残した強烈な体臭のせいです。肉と乳製品が中心の食生活から来るのでしょうか？ なるほど、香水の発達がうなずけます。
タイに赴任した最初の頃は、パクチ（洋名：コリアンダ 中国名：シャーツアイ 春菊のようなもの）の臭いに悩まされました。一般にあくの強い食べ物は、好き嫌いがハッキリしています。タイ人は大好きですからどんな食べ物にも混ざっています。だからハットするような美人でも口を開けば、このパクチの口臭がします。
私も直ぐに大好きになりどんな食べ物にも混ぜました。ある時、宿舎のマンションのバスタブに浸かりながら体を洗っていると、なんと私の腕から同じ体臭がしました。
韓国はなんと言ってもニンニクの臭いです。特に地下鉄のような密封された場所では強く感じられます。でも、最近は全く感じられなくなりました。よく〝お互いが餃子を食べれば気にならない〟と言いますが、それと同じで既に私自身がニンニクの臭いを発しているのでしょう。
タイで暮らした折に、親しいタイ人に先のパクチによる口臭の話をしました。すると彼曰く『日本人はウンコの匂いがする』と。これはきっと味噌の匂いではないかと思います。日々の味噌汁や、漬物の臭いが体に染み付いてしまったのではないかと思います。今時、自宅で味噌漬を作っている主婦など皆無に近いとは思いますが多くの日本人は、〝日本人は体臭がない〟と思っておられるでしょう。が、外人には違うようです。それにしても、の臭い、とはよく言ってくれたものです。
＊ 日本語は難しいのか？
多くの日本人は〝日本語は世界一難しい〟と思っておられるなではないでしょうか。しかし、会話に限定すれば日本語は易しい方だと思います。その理由は発音です。母音は５個と子音が９個の組み合わせしかないからです。
韓国語には基本母音が１０個の他に複合母音が１１個もあり，１４個の基本子音と５個の濃音の合計19個もあります。とてもカタカナのルビをふって対応できるものではありません。ということは基本的には我々には発音の区別が出来ないということです。
日本人の場合、相当英語の上手い人でも其の発音を聞けば、日本人だと解かります。カタカナ英語から脱しきれないのでしょうか。私の場合などＲとＬの区別どころか、ＢとＶ、ＦとＨの区別だって危なっかしいものです。
其の国の言葉が難しいか、易しいかは、其の国の人に其の国の言葉を話して通じるかどうか、と其の国の人の話す其の国の言葉がどれほど理解できるか、にあると思います。
私の経験では、外人が話す日本語が例えたどたどしくとも、文法が間違っていても、とにかく言葉そのものは１００％解かります。
私のタイ語、韓国語は時に全く相手に通じない事があります。それも一つの単語が。
10年以上タイに赴任しているＡさんが、バンコクのとあるレストランで頼んだ『塩』は、どうしても通じなく，その内、持って来てくれたのは『豆』でした。
我々が塩のタイ語を発音すると、顔がいがんでしまいます。
それとタイ人とは絶対に〝尻取り〟をしないことです。なぜかって？ タイ語には〝ン〟から始まる言葉があるからです。どうやって発音するのかって？ それが出来れば私のタイ語ももう少し通じるでしょう。
韓国には〝ン〟に当たる字が３つあります。当然発音は異なります。これもお手上げです。香港を英語標示すれば、〝ＨＯＮＧ ＫＯＮＧ〟とまるでキングコングのようになります。でもまさか伊達や酔狂で〝Ｇ〟が最後に付いている訳ではありません。当然 ＨＯＮ ＫＯＮと書かれた場合と発音は異なるはずです。
いや 〝言葉〟について書き始めると止まりません。そこで改めてタイトルに、〝その１〟と付け加えました。
この続きは次回に回します。
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