１０月２日、今日は池田師範学校主催の府下小学校陸上競技大会だ。今僕等選手１０人の外に、三笠ちび応援団長をはじめ数十人の応援団が池田師範の校門をくぐった所である。
　僕等も場所をとり、土師先生の号令で準備運動をした。「優勝するのか」と思うと足がうなる。
　メガホンで「１００米決勝を行います。選手は来て下さい」といふ。これには小川君が出て一等だ。今度は２００米予選だ。これは僕が出て一等。榎原君は惜しくも二等であった。
　昼食後。今フィルドでは走幅跳をやっている。そこから盛んに応援席に伝令が来る。今のところ小川君が４米６３糎を跳んで一等であるということだ。僕もどうかして一等をとらうと何べんも思った。
　スタートについた。「ドン」というピストルがなった。僕は飛び出た。スタートはかなりよかった。トップである。後ろの方で足音がする。まがりかどにきた。僕等の小学校の運動場よりゆるやかであるので思いきり手をふって走った。いぜんトップである。まがるところをすぎると応援団から盛んに「がんばれがんばれ」という応援がする。運動場の入口のところまでくると尾高先生の「がんばれ、もう少し」という声がする。僕はこの一息であると思って思いきり手を後ろにふって走ったが弱っているせいかあまり早く走れない。１米ばかり後の方では足音が聞こえる。僕は心の中であと１０米、５米、３米と思いきり速力をつけようとする。あと１米である。ふと後の方に水色のユニフォームを着た榎並小学校の選手が見えた。僕は抜かれてたまるものかと、思いきり最後の一ふりをふった。ゴールである。榎並とはほとんど同じである。僕は心配になって来た。すると決勝係の人が来て「これ一等」といって学校の名前をいはせた。僕はその時とび上がるほどうれしかった。大村先生、土師先生、尾高先生がかけてこられて、よくやったとほめてくださった。大へんうれしかった。タイムは２９秒８であった。僕はこれで大阪府の小学校２００米選手権をにぎったと思ふと、とてもうれしかった。
　６年雪組 民野幹男　　　　　　　　　　(学校新聞「ちさと」昭１３)